■埼玉県医師会長就任のご挨拶■

埼玉県医師会長写真

埼玉県医師会長 金 井 忠 男

去る2月25日に開催された第147回埼玉県医師会臨時代議員会で、埼玉県医師会長に選出いただきました。ご支持いただきました先生方に心より御礼申し上げます。

今回の会長選挙運動は粛々と進められたと感じております。一方で、代議員の先生方へご挨拶に伺うこともせず、大変失礼があったことをお詫び申し上げます。昨年は新型インフルエンザのため12月まで忙殺されてしまったことも理由の一つですが立候補宣言する場がなく、11月の地元医師会である所沢市医師会の理事会で立候補をすることを決意したので支援をお願いしたいと挨拶をさせてもらいました。

しかし、立候補宣言をどこで行えばよいのか、例えば郡市医師会長会議や県医師会理事会で行うことも考えましたが、公平性に問題があるなどと考えている内に新年を迎えてしまいました。新年早々から選挙運動は煩わしいのではないかと考えている内に1月も半ばになってしまい、結局立候補宣言をする機会はありませんでした。しかし、12月から時間のあるときに、多くの郡市医師会長先生等に立候補する旨を伝えるとともに、県医師会に対するご意見も伺ってきました。多くの先生方が長く時間を取ってくださり意見交換をすることが出来ました。大変参考になりどのような医師会にするかという考えが纏まりました。

吉原前会長の医師会運営は当然傍らで拝見してきましたが、実に勉強され素晴らしい会務をされたと思います。この点はしっかりと継承する所存です。良い点は継承していきますが、多くの先生に意見を頂戴し改善する必要があることも知り、現在すでに幾つかの正すべき点が見えており早速改善したいと考えております。また今後正すべき点がみつかった場合にも当然改善してまいります。

3月11日の第148回代埼玉県医師会臨時代議員会で執行部役員を選出いただきました。新執行部が一丸となって現在の最悪とも言える医療環境を改善するべく努力してまいりますので、会員諸先生には御協力、御助言をお願いいたします。

会長選挙にあたり立候補趣意書および選挙公報での所信で取り組むべき事柄を述べました。目標に掲げましたのは【強い医師会を目指す】です。埼玉県医師会は現在すでに強い医師会であると思われますが、さらに強い医師会になるべきであると考えます。私が言う強い医師会とは、ごり押しをする医師会とか利己的な医師会とか威圧的な医師会ということではなく、長い間継続的に行政そして県民に働きかけをして理解され獲得した力のことです。

医師会の役割として、諸先輩が行ってきた行政との折衝や連携など不断の努力や県民への健康サポート事業等が力となり、強い医師会になってきました。一朝一夕に強い医師会は出来ません。主張するべきところは屈することなく最後まで主張し、協力するべきところは積極的に協力し信頼が得られた結果発言力が強くなり主張が通る強い医師会になったのです。このようにして作り上げられた信頼と力をさらに強固なものにしなければなりません。それが新執行部の使命と考え努力していく所存です。

このように強い信頼関係が構築されたにもかかわらず、行政は現在の財政難から医療費や検診料等を抑えようとする動きがあります。県民には非常に不幸なことです。このような状況にあるからこそ、医師会はさらに強くならなければならないと考えております。

また、県医師会が強くなる必要性があると同時に、さらに強くなる必要性があるのが日医です。私は強い地方医師会は日医も国も動かすことができると信じています。埼玉県医師会は日医に場合によっては国に働きかけていきます。

私は、地域医療を守るため次のことを目指します。

@ 強い埼玉県医師会を創ります

A 強い日本医師会になってもらいます

B 医療崩壊から医療再生へ

これらを実現させるため次の事柄に取り組んでまいります。

1.執行部外の会員の先生方から成る諮問機関を設けます

執行部は会員のため県民のため日々努力を続けています。しかしながら外部からは見えにくい点があり、時に執行部の考えが理解できない場合があると聞きます。会員の声が届いていないとも聞きます。そこで、会員の代表として県内の優秀な頭脳が結集し提言頂く諮問機関を設けます。当然、提言や答申は最大限尊重いたします。関連団体の在り方、医師連盟の在り方、財政の問題、医師会館運営の在り方、公益社団法人の選択の可否問題等を検討していただきます。会員の声を出来るだけ取り入れ検討いただき、その結果を医師会改善のため役立てます。そして会員の先生方が納得のいく医師会となるよう努めます。

2.各方面に医療に係る問題改善のため常に発信を続けていきます

県、日医、場合によっては国に対しても提言していきます。医療環境が限界にきている今、医療再生のため訴え続けなければなりません。医療の崩壊は国民を不幸にし、再生には数十年が必要かもしれません。医療が崩壊するか、持ちこたえ再生するか、今が最も重要な時です。これを国民にもメディアにも理解してもらわなければなりません。諮問機関からは医療政策についても提言を頂き、埼玉県医師会が大きな発信源となるよう努めます。

3.医療費を増やすよう訴え続けていきます

医療崩壊の最大の原因は医療費抑制であることは明らかです。世界が真似ようとしてもできない日本の皆保険制度を医療費抑制が壊そうとしていることを、国民に理解して貰わなければなりません。憲法第25条に国民の生存権、国の社会的使命を規定しています。医療崩壊を止め、医療再生を行うことは国の使命です。医療崩壊の最大の原因が医療費抑制にあることが明らかな今、医療供給再整備を行うため国は責務として医療費を増やすべきです。これらを国民に周知しなければならず、これを実行するべきは日医です。何をおいてもまず日医に訴え続けていきます。

昨年厚労省ももはや医療費削減は限界であると言いました。医療崩壊を見ての発言と思われます。英国サッチャー首相が行った医療費抑制策が悲惨な医療環境を創り、後にブレア首相が医療費を1.5倍に増額しましたがいまだ回復の様子は見られていません。わが国も回復不可能な状態に近づいています。我々は次の世代の医師たちに良い医療制度を引き継がなければなりません。吉原会長も懸命に努力されましたが、現在の状況では直ちに良くなるとは思えません。医師不足も医療崩壊も医療費抑制が第一の原因であることは間違いありません。

今回の診療報酬改定でも財政中立の考えで進めるため、再診料は診療所を引き下げ病院を上げました。診療所の役割がどれほど大きいか厚労省は理解が足りないようです。日病協議長は病院が病院として機能を発揮できるのは診療所が頑張っているからだと言っています。まさにその通りです。さらに診療所の収益を病院に回すと言う考えでは日本の医療そのものがおかしくなるとも言っています。わが国の医療供給体制の中で診療所の担う役割は大きく、これを十分に認識して貰わなければなりません。献身的に診療する医師が経済的に不安を抱えているなどという事はあってはならないことです。日医に強く働きかけてまいります。

4.行政との連携・県民のための医師会活動を継続します

郡市医師会と地方自治体との関係と同様に、県医師会は県行政との話し合いを日常的に行っており良好な関係にあります。しかしなれ合いという雰囲気は全くなくいつも真剣勝負で、最近は医師会が県民のための活動、活動計画を続けていることを県は理解し、医師会の意見を聞き入れることが多くなりました。しかし最近の財政難から、財政重視の政策となる傾向にあります。この点については変えていくように働きかけていきます。

県民のための医師会活動として県民を対象とした医療フォーラムを毎年開催していますが、県民に大変好評で県からも感謝されています。フリーペーパーに埼玉県医師会健康手帳と名付けたコラムの掲載も続けており好評であると聞いております。このような活動を続けることにより、県民が医師会を評価してくれると思いますので引き続き頑張ってまいりますが、さらに良いアイディアが有れば取り入れてまいります。

5.医師不足対策に取り組みます

医師不足とりわけ勤務医不足は深刻です。中核病院の医師不足は地域医療体制を大きく崩してしまいます。診療所への影響も大きく中核病院だけの問題ではありません。新医師臨床研修制度や女性医師が増えたこと等が原因として挙げられています。新医師臨床研修制度は全人的医療を目指しスーパーローテイションの形で導入されましたが、結果は思うようになっているとは言えず一部見直しが行われました。一方で、大学医局の医師不足から派遣医師の引き上げが起こり関連病院への医師派遣機能を失うという大きなマイナスを生みました。女性医師問題は「埼玉県女性医師支援センター」が立ち上がり産後や育児後の再教育、フレックスタイム、ワークシェアリングなどを検討しています。さらに広い視野に立った取り組みも必要です。

勤務医の過重労働は次々と立ち去りを招き、さらなる条件悪化により悪循環に陥っています。当県が当番であった平成18年度全国医師会勤務医部会連絡協議会は「勤務医のアンガージュマンを求める」をメインテーマとし、例年行われる文化人等の講演会を全く入れず、「勤務医の労働条件」「勤務医の医政活動」の2本のシンポジウムを行いました。フロアーも含めた非常に活発なシンポジウムでした。これを集約したものを「埼玉宣言」として発表したところ大変な反響を呼びました。この時すでに新医師臨床研修制度の見直し、女性医師問題が話題になっていました。

医師不足改善のためには小細工を弄するような診療報酬改定による手当などではこれは解消されないと思われます。私は特定財源のようなものを利用しない限り不可能と考えており、これを提案したいと考えております。

6.勤務医部会を充実させます

当会の勤務医部会会員数は1,800名、組織率は72%で全国的にも非常に高い組織率です。しかし部会の活動状況は不十分であり今後の課題です。医師不足対策と関連の大きい勤務医部会を充実させることは非常に重要です。勤務医部会を充実させ、当県の勤務医部会から勤務医の過酷な労働条件改善策を日医や国に提言していきたいと考えています。

7.「開業医による拠点病院支援事業」を支援します

地域の実情により検討されるべき問題ですが、今後考えていく必要のある事業であろうと思います。すでに実施している郡市医師会もあります。この事業によって勤務医の先生方の負担が軽減され立ち去りが無くなれば大きな成果ですし、病診連携にも大きな役割を持つと思います。この事業は厚労省が開業医に期待する役割の一つとして考えたもので、当然補助金が出ます。

いろいろな面で良い効果をもたらす地域が有ると思います。それらの地域には是非とも本事業を進めて頂きたいと思います。県医師会で手助けできることは何なりと行います。

8.日本医師会の委員会等に多くの先生方が参加できるよう働きかけます

埼玉県医師会はここ数年過去最大数の各種委員を日医に送り込み、それらの委員の意見は日医の提言に大きく反映していると聞いております。今後も多くの先生方に参加いただき、大いに考えを主張し埼玉県医師会の存在を示して頂きたいと考えております。

9.特定健康診査・特定保健指導の見直しを求めていきます

平成20年度の健診結果をみると、受診率は極めて低く今年度も途中経過では昨年同様のようです。平成20年度は初年度であり準備期間のない状況であったため、検診開始がかなり遅れたことも一つの原因と考えられますが、県民の評判が悪かったことも当会の行ったアンケート調査ではっきりしました。特定健診では検査項目が少なく信頼できないという結果でした。特定健診による階層化のステップ1が腹囲測定というのは、エビデンスに基づくとされているとはいうものの、説得力に乏しく疑問視する者も多いようです。したがって本年の受診率も低いものと考えられます。

最近、厚労省研究班も国内三万人を超えるデータを解析した結果、腹囲の基準について「最適な値を決めることは困難」とする最終報告を発表しました。制度の見直しを求める声が高まると思われますが、当会はアンケート結果から県民が以前の基本健康診査の方が良かったという意見が圧倒的に多かったため、県内70市町村長に特定健康診査・特定保健指導は有効ではなく元の基本健康診査に戻してほしいとの要望書を送りました。

さらに、がん検診にも影響し受診率が低下したことも残念です。県民の健康管理の観点から元の基本健康診査、住民健診に戻すべきであると考えますが、特定健診の導入により1件当たりの検診料が25%程度下がり、その上受診率が激減したことから、実施医療機関の医業収入がかなり減ったはずで、この点からも基本健康診査に戻すことの意味は大きいと考えます。

この制度は見直すべきであると考えており、各方面に働きかけていきます。

10.新型インフルエンザ対策の見直しを行っていきます

昨年度の新型インフルエンザは、幸いにして弱毒性であったこととタミフルが有効であったため、死亡例は少数でした。しかし、国の方針が二転三転したため会員諸先生には戸惑いも誤解もあったようですが、県医師会としては県行政との独自の話し合いを頻回に行い、他県より速いペースで一番よいと考えられる方法を実施してきました。

今回の新型インフルエンザ流行から学ぶべきことは多いはずで新型インフルエンザ対策を見直していきます。

11.埼玉県地域保健医療計画を推進します

平成20年2月に策定された「埼玉県地域保健医療計画」において、県民に切れ目のない医療を提供するため、いわゆる4疾病5事業に対応した地域医療連携の推進が主要課題として位置づけられました。第5次計画の特徴の一つは地域における連携体制の構築と、分かり易い計画となるよう達成すべき目標を出来るだけ数値で明示するというものです。しっかりと進めてまいります。

埼玉県医療費適正化計画は保健医療計画と同時に審議されております。平成24年度をもって介護療養病床が廃止され、医療療養病床が削減されます。国の算定では当県は7,100床でしたが埼玉県の特殊事情を勘案して9,800床となりました。国の算定からすれば大幅な増ですが、2年後さらに不足する様な事が有れば再度検討いたします。

12.埼玉県医療対策協議会が十分機能するよう努力します

本来医師確保のために置かれた協議会には、5つの部会が置かれており各部会では各々の問題点を解決してきております。協議会の存続期間は6年間であり3年が残っております。今後も続くと思われる医師確保等の困難な課題にはあらゆる方策をもって対処してまいります。

これに関連して、医師会内に周産期・小児救急医療体制整備委員会を立ち上げ、大学病院から診療所までの現場の医師たちの意見を取り入れ、「地域医療・福祉コンソーシアム」、「多極ネットワーク型周産期救急医療体制」構想を県知事と共に打ち出し、近隣都県との連携が進みつつあります。これも私たちは一丸となって推進します。

13.埼玉県医師会の財政基盤をより強固にします

私たちはこの6年間で会館運営のため冗費節減、テナント業務の拡充など行い、県民健康センター整備・改修積立金を12億4千万円に積み上げてきました。しかし、これに頼ることなく健全な運営ができるよう会館運営委員会で協議し、今後とも努力し、これをさらに強固なものにします。

14.埼玉県医師会内業務をさらに充実させます

安心安全の医療を提供するため各種研修会等学術推進、医事紛争解決体制、医療相談窓口、正しい保険診療請求書作成指導体制、医療経営セミナー、無料子育て相談窓口などは執行部が一丸となって頑張った結果、しっかりとしたシステムが出来ています。今後さらに拡充していきます。

15.郡市医師会のお招きには参加させて頂きます

お招きいただいた時には、可能であれば出席させて頂きます。その折多くの先生方から御意見等をお聞かせ頂き、医師会発展のために役立たせて頂きます。

16.何時でも連絡できる体制を作ります

会員の先生方が御意見、御質問等が有る時、何時でも連絡が取れるよう、携帯電話、ファックスの番号、e-mailアドレスを公表します。

立候補趣意書および選挙公報の所信において、以上の様な事をお約束いたしましたので、全力で実行してまいります。

先にも述べました通り、埼玉県医師会は昨年日本医師会に最も多くの提言をした医師会と言われています。また日本医師会各種委員会に多くの委員を送り、ここでも各委員が活躍しています。委員は日本医師会で当会の代表として意見を述べ、多くが取り上げられてきたと思います。日本医師会が地方医師会の意見を取り入れることは重要ですが、日本医師会の最も重要な事は強いリーダーシップを持つ事であり、強い姿勢で外に向かうことです。政権交代後の日本医師会は方向を見失ったように見えます。早急な立て直しが求められます。本文が掲載された会誌が刊行された時には、日本医師会長が決まっているはずですが、日医会長には是非とも強い医師会を創って頂きたいと思います。

埼玉県医師会はさらに強い医師会となり、日本医師会の強いリーダーシップの実現と本会諸事業を初志貫徹するため、県行政サイドや関係団体に強く働きかけていきたいと存じます。

そのためにも、今後さらに各郡市医師会の会長先生並びに役員の先生方と意見交換など密接な連携が必要になってくると存じますので、よろしくご指導ご鞭撻のほどお願いいたします。また、埼玉県医師会では会員諸先生のご意見等を広く反映させ、会員の先生方に寄与・貢献できるよう一層努力し、埼玉県医師会を発展充実させていきたいと存じますので、何とぞご支援ご協力を重ねてお願いし、私の会長就任の挨拶といたします。

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